人事・採用術「小さな会社が大切にしなければいけないもの」

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誇りを持って本物を求める

「うちみたいな小さな会社は、なかなか優秀な人は採れません」

中小企業の社長や採用関係者の第一声で特に多いのがこの言葉です。

採用関係者の想いを含んだ、決して軽くない言葉だと思うのですが、もしそこに「大企業ではなく、中小企業なのだから、そんなに優秀な人でなくても…」というニュアンスが含まれているとすれば、その社長や採用関係者は、この先ずっと人事採用の問題で苦労することになるかもしれません。

「優秀な人材は大企業に多く、中小企業には少ない」という固定観念に縛られている中小企業の社長や採用関係者が多くなってきています。

その考え方は、「中小企業は、優秀な人材を採用する必要がない」という採用観に直結しかねないので危険です。優秀な人材が本当に大企業に多いか否かは、「優秀な」が何を意味するかを突き詰める議論が必要になるので一概に言えませんが、「中小企業に優秀な人材は必要「中小企業こそ、本当に優秀な人材を必要とする」というのが絶対的な真理だと思います。

大企業には、提供するサービスや商品を常に同質に保たれなければならない、という社会的責任があります。ですから、いかなる社員が携わっても、最終的には品質が維持されるように作られた無数の仕組みがあります。

マニュアルは緻密で、職場の経験知も潤沢な上、助けてくれる上司や同僚も常に大勢存在し、良くも悪くも「依存先」は豊富です。

職場にどうしても合わない社員がいれば、異動先もたくさんあります。新入社員の質が多少ばらけても、少しばかり困った人が紛れ込んでも、ある程度はそれをカバーできる構造が、大企業にはあります。

一方、中小企業では「カなき新入社員ーをサポートする仕組みがどうしても薄くなります。中小企業に入社した人は、場合によってはその日から、自分の頭で考え、自分の足で動くことが求められます。「依存先」が少ないからです。

中小企業は、仕事を任せることができ、自力で成果を確保できる人材を本来的に必要とします。そして、そのような人材が一人入社することによる生産性、の影響や相乗効果は、大企業におけるそれとはとても比較になりません。

ですから中小企業は、新卒採用であろうが中途採用であろうが、採用するのであれば、本当に優秀な人材でなければいけないのです。中小企業だからこそ、何を置いても、草の根を分けてでも「本物」を探し出し、入社させなくてはいけないのです。

「中小企業だから…」と、採用に言い訳や妥協を残す社長や採用関係者は、自分で自分の首を絞めているようなものです。 その心の緩みが、会社の生産性にダメージを与える危険因子を、また社内に増やすことになるからです。

冒頭の言葉は、時にこう続きます

「優秀な人材は、みんな大企業が持っていっちゃいますから」

この言葉は、・新卒採用に臨む社長や採用関係者からよく聞かれるものですが、これも明らかに間違った認識です。 「優秀な人材」という概念ほど、不安定で誤解を集めやすいものはありません。

大企業を含めた日本のほとんどの会社が、「優秀さ」が何かを知らず、またそれを見極めるノウハウも持っていないので、とりあえず大学の偏差値の高さというモノサシに着目し、その上位者から確保しようとする傾向が多くなってしまいます。

しかし、学力が高い人材と本当に優秀な人材は驚くほど別物なので、大企業は「優秀ではない学力の高い人」を毎年、大量に採用していることになります。

先ほどの言葉は、次のように言い換えられたなら正解です。

「学力の高い人材は、みんな大企業が持っていっちゃいますから」

リスク人材も含めた「学力が高くても優秀でない人材」を大企業が大量に採用した後には、 確実に 「目立った学歴や経歴を持たないけれど、優秀な人材」がたくさん残っています

中小企業は、そのような「目立たない本物」を、多くの華やかな人たちが去った母集団から落ち着いて拾い上げていくことができるので、中小企業が優秀な人材を確保できる機会は、大企業と同様か、むしろそれ以上かもしれません。

これは、決して絵空事ではありません。私たちがクライアント企業と協働して採用選考を実施する時、たくさんの残念な一流大生を「皆さん、いい大学に行っているし、話も上手だから大手が採ってくれるんだよね」「でもこの人たちを採用した大手は大変だよね」と言いながら見送ります。

そして「大手はたぶん採用しないよね」と思えるような、「華やかな武器は持たないけど、優秀な学生」を見つけると、自信を持って内定を出すのです。

中小企業の新卒採用に関して、よく「大企業の採用活動状況との兼ね合いをどう考えればよいか」という話題が持ち上がりますが、私たちのクライアント企業は、大企業の動向をあまり気にしません。

「どの時期に採用活動を実施すれば、採用成功率が高まる」といった因果関係が浮かび上がったこともありません。

大企業はいつでも採用市場に逸材を残していってくれる

中小企業としては、大企業の存在などを気にせず、よそ見をせずに目の前に現れた本当に優秀な人材に反応できる感性を高めることだけに尽力すべきでしょう。

中小企業が人を採用する時には、「うちみたいな会社に来てくれるかな」などの弱気なことを考えたりせず、自分の会社が「人を採用し、雇用できる立派な会社、であるという誇りを強く持っことが必要です。

間違っても、「自分たちは大企業でもないし…」などと卑屈っぽい思考回路を持つことなく、中小企業が人を採用することの意味と価値が、大企業の採用とは比較にならないほど大きいことを再認識し、その重要な採用を敢行できることを誇りに思うことが必要です。

そして、「自分たちこそ、最高の人材を採用しなければいけない会社なのだ」と、誇りに思えるように心を整えることが必要です。

もし、それらができないと言うのなら、その採用はしばらく見送るほうが賢明でしょう。

自信や自負、自らへの信頼を欠いた状態で取り組む採用は緩く、甘く、いい加減なプロセスと、極めて残念な成果に繋がってしまいます。

小さな会社であるからこそ、誇りを持って採用活動に臨みましょう。